恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
「これ、返す」

と、『カントク』へ向かう専用のエレベーターの中で大上部長の上着のポケットから黒のIDカードを渡された。

「よろしくお願いします、大上部長」

「これから忙しくなるぞ。椎名萌香」

「はい!」

やっぱりここがわたしにとっての適職の場であると、『カントク』の重い扉を開けた瞬間、そう思った。

わたしを見つけるや作業班のみんなが手をとめて、おかえりなさいと声をかけてくれる。

待っていたのはわたしだ。

ここに戻れるだけでも奇跡だというのに。

「さすがにこの部屋でこの状況では無理か」

と、握っていた手を離し、大上部長が特別班のドアを開けてくれた。

「萌香ちゃん、おかえり」

「椎名サン、ついに部長に認められたんだね」

「これ以上タテついたら承知しねえからな」

「やっぱり見込みがあったんだね。よかったじゃない、椎名さん」

特別班の部屋に、みんなが集まってわたしのことを待っていてくれた。

やっぱり『カントク』にきてよかった。

最初に『カントク』なんて嫌だなんていってた自分に説教してやりたい気分だ。

「盛大に歓迎してやるぞ」

と、目の前にはダンボールいっぱいの伝票やら書類が山になっている。

「歓迎って」

「仕事が欲しいんだろう。処理できるようにためておいたから」

大上部長はそういって、いつものようにふんぞり返って自分の席に座っている。

「相変わらず仕事に関しては厳しいお方ですこと」

と、あおいさんが口をとがらせると、大上部長は、これは俺のやり方なんでね、と笑ってかえしていた。
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