恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
「どうしてわたしを『カントク』に招いたんですか」

「仕事ができるからだ。それにお前は以前から本性を隠して仕事をしていたみたいだが。メガネといい、地味な格好といい」

そういって、わたしをまた冷たい目で見始めた。

「これはただ、目立たないようにしたかっただけで。こんな格好したくなかったんです」

「似合わない格好して無理して仕事をしている姿を見ているこっちが苦しくなる」

「……はい」

わたしの気持ちを知ってくれていたなんて、思ってもみなかった。

「本当なら大空に高く飛び立てる人材なのに、下手な人事が行ったことで自分の能力が発揮されていなかったみたいだし」

「……そうなんですか」

「男に散々弄ばれていたみたいだしな」

「……そ、それは」

「だから『カントク』に呼んだんだよ」

大上部長は席から立ち上がり、わたしのもとへと歩み寄る。

「それだけですか?」

「それだけってなんだよ」

わたしのそばまで近寄り、首を傾げて下目遣いでわたしをみている。

「答えてほしいのか」

「大上部長が教えたくないならいいです」

「気がついたらお前ばっかり追ってた」

「えっ」

突拍子もない答えに驚きを隠せなかった。

「津島が会社の損益になることをすると知ったとき、気になって背後関係を調べたらお前が出てきた。あんなにしっかり仕事やっているのに、どうしてこの子は日の目をみることができないって思ってね。夜の会議室がいいチャンスだったよ」

「え、それって」

「狙った獲物は逃がしたくない性分なものでね」

ふふ、と笑うと、わたしの肩をぽんぽんと軽く叩いた。
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