恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
大上部長は普段と変わりなくて昨日抱きすくめたのは夢だったかのように振舞っている。
伝票のことで質問したとしても、目を合わせてくれない。

せっかく大上部長のこと、好きになったっていうのに。
いつまでお預けされないといけないんだろう。

あれはやっぱり夢だったんだろうか。

次の日、硬い表情の大上部長からミーティングだと特別班のみんなが一同に顔を合わせた。

「新しい仕事が入った」

「どんな仕事ですの?」

あおいさんが目を輝かせている。
新しい仕事がはじまるということで、他の人たちも姿勢を正したり、じっと大上部長の顔をみつめたりしている。
わたしも新しい仕事の依頼と聞いただけで胸が高鳴った。

「社員教育だ」

「社員教育って人事がやれば済むことじゃないんですか?」

ぽつりとわたしがつぶやくと、大上部長はコホンと軽く咳払いをする。
いつものえらそうに口をたたく悪い癖が出ちゃったかなと、反省していると戸塚さんと鈴井さんににらまれた。

「特異な案件が発生した。ウチの取引先である会社の女性を一人前の社員として育てることになった」

大上部長が机の上から資料をとると、あおいさんに渡し、あおいさんが他の人へと配り、最後に資料がまわってきた。

取引先の女性社員を育てるため、特別班は会社の中枢を担う統括営業本部と名前をそのときだけ変更して活動することが決定された。
部長はもちろん大上部長で、戸塚さん、鈴井さん、横尾さんは営業で、あおいさんとわたしが営業事務としてつとめることになる。
肝心のターゲットに関しては、氏名や年齢など個人情報は書いておらず、業務開始のときに改めて紹介すると記載されていた。

「仕事はいつもと変わり無い。その分、『カントク』の任務についていることはその女性には秘密にすること。追って連絡する。ミーティングは以上だ」

簡単なミーティングが終わると、他の人たちはそれぞれの持ち場へと向かう。
少々浮かない表情をしていた大上部長が気になった。
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