恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
あれから全然つっかかってこないけれど、それでも避けられてるような気がした。

「大上部長」

「今、忙しい。端的に話せ」

「頼まれていた資料作成、終わりました」

「わかった。ご苦労」

そういってわたしに顔を向けず、仕事に没頭している。
これが普通に仕事をしている状態なんだってわかるんだけど、部屋で抱きしめてくれたあの行動は一体なんだったんだろう。

「あんなにじゃれてきたのに、どういう風の吹き回しなんでしょうね」

と、あおいさんがポロリとつぶやく。
あおいさんの声が聞こえたのか、

「あおい、この資料を届けてくれ」

と、あおいさんにだけは顔をむけている。

「わかりました」

おかしいですわ、とつぶやきながら、資料を届けに部屋を出ていった。

二人っきりになったというのに、わたしも大上部長も何も話さずに黙々と仕事をする。

「……大上部長、あの」

「私語は慎め。業務時間内だ」

「……はい」

やっぱり目をこちらに向けてくれないし、声の端々に冷たさが残る。

これ以上、大上部長との進展はないってことでいいのかな。
せっかく好きになっているっていうのに。

仕事だってわかっているけれど、こんなに近くに好きなひとがいるのに、甘えられないのはつらい。
これ以上、大上部長のこと好きにならないほうがいいのかな。
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