恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
特別班総動員で使っていなかった『カントク』の下の階にある小会議室を急遽『カントク』特別班用の部屋に作り変えた。
ただ名前を変えただけの新しい部署、統括本部だ。
さすがに『カントク』の存在を他の人間に知らせるわけにはいかない。
今日からくるターゲットの女性のためだけの部署だけれど、一体どんな人がくるんだろう。
準備がすみ、部屋から廊下に出て統括本部のプレートをドアの横の壁に取り付けているときだった。

キョロキョロと周りを見渡す女性がいた。
薄いピンク色のフレアスカートに同色のジャケット。
インナーの白色のシフォンブラウスをちらりとみせている。
肩にかかるブラウンの髪はゆるく巻かれており、大きな瞳を隠すように長くカールされたまつげに、唇のピンク色のグロスが光る。

「あの、ここ、統括本部でよろしいかしら?」

物腰の柔らかさが誰かに似ている。あおいさんだ。

「はい、ここが統括本部ですが」

「どうもありがとう」

と、髪の毛をなびかせながら、さっさと部屋の中へと入っていった。

「あ、あのどういったご用件でしょうか?」

といってもその女性はわたしに答えることもなく、奥に座る大上部長にむかって歩みを止めない。

それをみた大上部長は腰をあげ、机の前に立って待ち構えていると、その女性はわたしのときには見せなかった満面の笑みを浮かべ、奥にいる大上部長へまっすぐ駆け寄っていった。

「会いたかったわ。聡に」

と、大上部長にその女性はおもいっきり抱きついた。
わたしやあおいさん、戸塚さんや鈴井さん、横尾さんの目の前で。

「……藍華お嬢様」

「お嬢様だなんて。昔の言い方でいいのよ? 藍華って呼んでくださって」

わたしたちがじっと見つめているのにもかかわらず、その女性、藍華さんは大上部長を抱きしめていた。
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