恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
「藍華お嬢様、仕事になりませんから、離れてください」

大上部長は必死に藍華さんの体から逃れようとして身をよじっているが、藍華さんは大上部長の言葉を聞かずにぎゅっと抱きしめたままだ。

「えー、いいじゃない。好きなもの同士くっついちゃダメなの?」

藍華さんは甘ったるい声を発してますます大上部長と離れようとしない。

「早乙女さん、ここは会社なのよ。分別をきっちりしなくては」

と、あおいさんが強い口調で話した。

「久しぶりに聡に会えたのに。仕方ないわね。あとでその分付き合ってもらうから」

と、藍華さんは両頰をふくらませながら、しぶしぶ大上部長から離れた。

「気を取り直して仕事を始める。あおいと椎名萌香は藍華お嬢様のサポート役だ。わかったな?」

大上部長はスーツの裾を直しながら話をする。
やっぱりわたしには目を合わせてはくれない。

「えー。聡と一緒に仕事できないの?」

藍華さんはちらりとわたしとあおいさんをみてから、ふてくされるように大上部長に言う。

「私にもいろいろと仕事がありますので。時間が空いたときにはサポート役に回りますから」

「絶対よ。まったく聡はそういってすぐに約束破るんだから」

昔っから約束を破るひとだったんだ、大上部長って。
ちらりと隣をみると、あおいさんは頭をかかえていた。

「それでは各自、持ち場へ」

と、大上部長が言うと、鈴井さんと戸塚さん、横尾さんは部屋を出ていった。

「じゃあ、あたしは何をすればいい? あおいさんと、えっと……」

藍華さんは左人差し指を頰につけて、かわいらしく瞬きしながらわたしをみている。

「椎名萌香です」

「椎名萌香さんね。いろいろとお世話になると思いますけど、よろしくたのみますね」

「……はい」

そういうと、藍華さんは納得したように小首を傾げながら笑顔を振りまいた。
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