恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
座席は部屋の奥にひとつ大上部長の席があり、中央に戸塚さん、鈴井さん、横尾さんの仮の席があり、入り口に近づくにつれ、向かい合わせるようにあおいさんとわたしの席があり、一番入り口に近い藍華さんとわたしの席は隣同士になっていた。

「さて、何をすればよろしいのかしら」

優雅な感じに藍華さんは席に座り、わたしの指示を待っていてくれた。

「各部署の資料整理を行っているので、一緒にやっていきましょう」

持っていた資料を藍華さんに手渡すと、すぐに藍華さんの顔が曇った。

「もっとないのかしら? 例えば大きな企画を立てるとか、上司の方々と会食とか」

「まずは基礎からのほうがいいんじゃないのかしら」

と、あおいさんが合いの手をくれた。

「そうね。初日から飛ばしても体がもたないわ。教えてくださる? 椎名萌香さん」

このひとまでもフルネームなのか、とげんなりしたけれど、これも任務の内だ。
受け入れることとしよう。

「この資料のデータをまとめてもらえますか?」

「わかりましたわ」

藍華さんは手慣れた手つきでパソコンに触っている。
出来上がった資料をみせてもらうと、特に目立ったミスもない。

しばらく経って、突然パソコンの手を休めていたと思ったら立ち上がり、大上部長の座る席まで資料を持って向かっていった。

「聡、これどうやればいいと思う?」

また甘い声を発して大上部長を困らせている。

「すみません。こちらの仕事が立て込んでいるので、サポート役の方々に聞いてもらえませんでしょうか?」

「ちょっと教えてくれればいいのに。昔と変わらないね。聡は」

むすっとしながら藍華さんは席についていた。

「わからないことがあったら相談してくれれば」

「いいわ。別に。わかることだったから」

といって、藍華さんはわたしの言葉を遮り、パソコン画面に向かって口をへの字に曲げながら入力を進めていた。
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