恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
下りのエレベーターのドアが開き、あおいさんとともに乗り込む。

「うちと取引のある大手商社のひとつ、早乙女コンツェルンの社長の娘さんよ」

1階の階ボタンをおしながら、息を吐くようにあおいさんが話す。

早乙女コンツェルン。
老舗の顔とともに新事業を一手に引き受けて時代の波に乗る一線の会社だ。
そんな会社の娘さんがどうしてウチの会社なんかに。

不安そうな顔をしていたのか、あおいさんがわたしの顔を伺いながら話を続ける。

「父から聞いた話だと、早乙女社長から直々に娘の独立させるために仕事をさせてくれないか、という話になってね」

いずれは父親の仕事の手伝いをしたいといっていたけれど、まずは別の会社で経験を積んでそれからにしたいということになった。
どこかいい職場はないかと思っていた矢先、あおいさんのお父さん、つまりウチの会社に白羽の矢が当たった。

一応社会人経験はあるときいていたが、初日からあんな感じになるなんて。
お嬢様といえばお嬢様、大物といえば大物なのかもしれない。

「ずいぶんと大上部長になついてましたけど」

藍華さんも藍華さんだけど、大上部長もしぶしぶ受け入れていたのが納得いかない。

「ウチの父が優秀だった大上部長を当時高校生だった藍華さんの家庭教師にさせたのがきっかけだそうよ」

大上部長が藍華さんの家庭教師か。
多感な時期に出会ったなんて羨ましいけれど、向こうは仕事として藍華さんに近づいていただけだろうし。
明日からどう藍華さんと接したらいいのだろうか、と悩みながらも1階ロビーについて、あおいさんと別れ、自分の部屋へと戻った。
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