恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
大上部長は社長室室長も兼ねているため、席をはずすことが多い。
もどってきて早々、仕上がってきた資料をわたしの机から取り上げて、

「聡、できたわよ」

といって大上部長に資料を手渡した。
大上部長はすぐさま資料に目を通す。
少しだけ険しい顔をしながら、

「藍華お嬢様がこの資料を作ったんですか」

「聡、もちろんよ。椎名さんに手伝ってもらいながら」

といいながら、さも自分が全部作ったかのように目をうるうるさせながら大上部長に訴えている。
文字入力とグラフだけしかつくってないくせに。

「藍華さん、そういう言い方はダメですわ」

と、秘書室から戻ってきたあおいさんがピシャリと叱った。
せっかく大上部長と話せる環境だったのにと、不満そうに藍華さんはあおいさんのほうをじっとみつめている。

「じゃあ何とお呼びすればよいかしら」

「大上部長でよろしくては?」

早乙女さんは大上部長と小声で復唱して、

「わかったわ。大上部長」

急に言い方が変わってびっくりしたのか、大上部長は軽く笑いつつ恐縮していた。
みかねたあおいさんがすかさずツッコミをいれる。

「大上部長も、同じ会社の部下なんですから、お客様扱いしてはどうかと思いますけど」

「あおいの言う通りだな。これから早乙女と呼ばせてもらうから」

「わかったわ。何か新鮮ね」

と、藍華さんは鼻歌まじりだ。
いつまでこんな状況で仕事をしなくてはいけないのだろうか、と途方にくれながら、残りの資料づくりを進めていった。
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