恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
大上部長は机に置かれたできたての資料を手に持ちながら首を傾げていた。

「これ作ったの、誰だ?」

「あたしですけど」

と、藍華さんが必死になって両手をバンザイのようにあげて猛烈アピールしている。

「ちょっといいか。椎名萌香」

大上部長が冷ややかにわたしの名前を呼ぶ。
大上部長は珍しくわたしに目線をむけている。
両手をさげながら冷たい視線を藍華さんにぶつけられた。
しぶしぶ席をたちあがり、大上部長の席の前まで行く。

「これ作ったのおまえだろ? 数字間違ってる」

と、赤字で丁寧に訂正されたものを返された。

「あと、早乙女。自分の仕事はしっかりやるように」

「……はい」

弱々しく答えているが、敵意むき出しの眼差しを送る早乙女さんを尻目に大上部長からもらった資料の手直しを行った。

昼休み、大上部長が外出すると席を離れてから、横にいた藍華さんがこちらに顔をむけて睨んできた。

「ちょっと、聡に怒られちゃったじゃない」

「それは自分の仕事をしないってことがバレたからじゃないですか?」

「協力してくれたっていいじゃない」

かわいい顔をしているのに奥歯をかみしめているせいで僻みっぽい顔つきになっている。
その表情は今まで好きになった男にはみせたことがないんだろうな、と呆れてみとれてしまう自分がいる。

「精一杯やってます。藍華さんのお世話にしてますし。早く仕事を終わらせないと」

「そうやって聡に取り入れられようと思ってるんでしょ?」

「そんなことはありません。きちんとお給料もらっているわけだし、わたしは仕事をもらえることで会社に役に立ててるってわかったから」

「まあ、まるであたしが会社へ遊びにきているみたいじゃない」

確かに遊びっぽいところもありますけど、といいたいところをぐっと腹のなかに沈めた。
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