黄昏の千日紅
歩みを進めると、私が今日から通う高校の正門が、視界に飛び込んできた。
正門の周りには誰一人おらず、広い校舎からは静寂が広がっている。
この様子だと、既に入学式は開始しているのであろう。
私は安堵の息を漏らし、正門へ向かって歩みを進めた。
____入学式兼、始業式。
この学校は全校生徒が講堂に集まり、一斉にそれらを行うらしい。
新入生代表の挨拶を任されることになった私は、適当な嘘を吐いてその立場を逃れた。
大量の人混みの中で堂々と胸を張って挨拶など、ただただ面倒である。
それに、巷では有名な名門校の首席を誰もが望む学校で、私のような人間が壇上に上がったところでどうだ。
実際、先生方は私が断りを入れたことに安堵の表情を浮かべていた。
幾ら成績が良くても、頭の出来が良くても、結局人は見た目で判断する。
私のように化粧が濃く、髪色を明るく染め上げ、ピアスホールが両耳に何個もあるような不良女を軽蔑したのであろう。
面接時に寝坊し、化粧などする暇もなく、黒スプレーで髪を黒くしただけの私をすんなり受け入れたのは学校側だというのに。
人は何事も見た目で物事を判断する。
無論、人間のことも。