黄昏の千日紅





校舎から鳴り響く鐘の音が耳に入り込むと、私ははっと我に返った。
柄にもなく、他人の心に気を取られていたことに薄く嘲笑を浮かべる。


____らしくない。







昇降口まで歩くと、丁度始業式を終えたのか、生徒達の賑やかな声が廊下の向う側から聞こえてくる。




見慣れない校舎に足を踏み入れ、自分の下駄箱を探した。




昇降口の、すぐ隣にある1-Sの教室。




その教室に、私が一歩足を踏み入れると、ちらほら居る生徒達の視線を一気に浴びた。





一瞬にして、彼等の賑やかだった話し声がぴたりと止まる。





私が黒板の前に行き、自分の指定された席を確認してそちらへ向かえば、再びゆっくりと話し声は戻っていった。




しかし、未だに彼等の視線を感じる自分の神経に溜息を吐く。




それらの視線が痛い程に私に罵声を伝えてくる様な気がして、首席代表挨拶を断ったことに今更ながら胸を撫で下ろす。






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