黄昏の千日紅
1-Sは、SからEまであるクラスの、成績上位者二〇名のみ入れる特別クラスである。
始業式から戻ってくる生徒達は、皆、黒髪にきちんと整えられた制服だ。
見た目からして、勉強が出来ますオーラを存分に放っている。
そんな彼等の視線から私へと伝わる言葉は、手を取るように分かる。
今、私と目が合い、気まずそうに逸らしたフレームの無い眼鏡をかけた男子生徒。
ぽっちゃり体型の、頬に雀斑のある女子生徒。
” 何でこの金髪頭が首席なわけ ”
” 首席を断ったとか何様のつもり ”
声には出さないが、大体このようなニュアンスのものであろう。
私は窓側にある、前から三番目の席に着く。
するとこの席から、正門にあるあの大きな桜の木がはっきり見えることに気が付いた。
窓側の席に対しては嬉しい筈であるのに、外を見る度あの桜が嫌でも視界に入る。
そう思うと、私は酷く落胆した。
桜を見ると、途轍もなく憂鬱な気分になる。
そして、昔のことが鮮明に思い出される。