黄昏の千日紅
それでも、思い出したくないことは何故か憶えているもので。
それは、雲ひとつない快晴で、私の気持ちとは裏腹に、嫌味なくらい清々しい気候だった日。
私の忘れたい記憶。
消したい過去。
その日は、私がまだ小学生で、丁度誕生日を迎えた日だった。
私は両親と優くんの四人で、近くの遊園地に遊びに出掛けた。
遊園地に連れて行って貰った帰りに、両親から、突然、「近くにある海に行こう」と誘われ、私は悩んだ末、渋々頷いた。
あまり、乗り気ではなかった。
海なんて特別、好きではなかった。
しかし、憧れであり初恋の優くんとまだ一緒に居られる、ということに舞い上がって、私は二つ返事で了承した。
今思えば、何故、突然両親が海に行こうだなんて言ったのか。
小学生だった私には分かる筈もなく、考えもしなかった。
ただ自分のことで、頭がいっぱいだった。