黄昏の千日紅








「…おい、藍川」







不意に私の苗字が耳に入ってきて、私はぱっと目を開ける。




いつの間にか教壇に教師が立っていて、呆れた表情で私を見ていた。





周りからの痛い視線を一気に浴びる。





「ったく、入学式にも出ず、ホームルームもぼけっとしやがって。放課後職員室来いよ」




そう言って先生は教室から颯爽と出て行き、しんとしていた室内が、次第にがやがやと騒がしくなる。




どうやらホームルームの始終さえも気付かないくらいに、長々と昔のことを思い返してしまっていたらしい。





< 160 / 284 >

この作品をシェア

pagetop