黄昏の千日紅
「…おい、藍川」
不意に私の苗字が耳に入ってきて、私はぱっと目を開ける。
いつの間にか教壇に教師が立っていて、呆れた表情で私を見ていた。
周りからの痛い視線を一気に浴びる。
「ったく、入学式にも出ず、ホームルームもぼけっとしやがって。放課後職員室来いよ」
そう言って先生は教室から颯爽と出て行き、しんとしていた室内が、次第にがやがやと騒がしくなる。
どうやらホームルームの始終さえも気付かないくらいに、長々と昔のことを思い返してしまっていたらしい。