黄昏の千日紅
私が視線を送ってしまっていたからであろう。
彼が私の方を見て、お互いの視線が初めて絡み合った。
真正面から見たのは初めてのことだ。
爽やかな涼し気な人。
アーモンド型の綺麗に縁取られた瞳は、少し冷徹な雰囲気を醸し出しており、私の背中に少し、ぞくりと悪寒が走る。
触れてしまったら、簡単に壊れてしまいそうな線の細い体。
人形のように無表情で、まるで創られたような顔立ち。
本当に、一本指であっても触れてしまえば、いとも簡単に崩れてしまいそうだ。
身長は一八〇センチは超えているだろう。
両耳に沢山のピアスをしている。
端から見れば只の不良男子だ。
彼は私と数秒目が合った後、すっと目を逸らし、私よりも先に室内を後にした。
…愛想のない人だ。
桜の木下で、花弁を見上げる姿は、何かを愛おしく思うような優しい表情に見えたのに。
私のように、彼もまた人間に臆病なのであろうか。
なんて。
私と他人を一緒にしてしまったら、その人が可哀想だ。