黄昏の千日紅






次の日から早速授業が始まった。




昼食後の眠気漂う教室内で、私はぼうっとしながら黒板に視線を向けて、先生の熱心な説明を聞く。




頬杖を付きながら、何気なく窓の外にある桜の木に視線を向ける。




気付いたことは、昼休みに桃色頭の彼が、桜の木を見上げに来ていたこと。




たった数分それを見上げ、校舎へと戻って行った。





そんなに桜が好きなのであろうか。
髪も、桜に似せて染めているようだし。




彼の表情はここからでは分からないが、凡その見当はついた。





顔を黒板に戻すと、数学の公式を板書している先生の薄毛頭が目に入った。





一切ノートを録らない私を、先生や周りの生徒は怪訝な顔をして見ていた。





中学卒業時には既に、大学入試の勉強を進めていた私には簡単な授業に過ぎない。




薄毛頭の先生も、そんなちらちらと様子を伺うように私を見ないで欲しい。





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