黄昏の千日紅






保健室の扉に手を掛けて開けてみると、河村先生は不在のようだった。





私が近くにある椅子に腰を掛けると同時に、閉まっていた窓側のベッドのカーテンが勢い良く開く。





そして、ちらりと視界に映る、桃色の明るい髪色。





その瞬間、私の心臓がドクンと大きく跳ね上がる。





いや、これはただ、人が居ると思わなかった為に少し驚いただけだ。
そう自分に言い聞かせる。




彼は私の顔をじっと見つめ、薄い唇を開いた。





「せんせー、今印刷室」





それだけを私に告げ、再びカーテンを勢い良く閉める。






…なんて愛想のない。




いや、初めて近くで目にした時も職員室で愛想のない人だと思っていたけれど。



だが、寝ていた人間が逐一報告してくれるということは、彼は優しいのであろうか。


分からない。





私が返答する前に視界を遮った彼は、本当に冷淡で、近寄り難い雰囲気を存分に醸し出している。






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