黄昏の千日紅
何となくもやもやする気持ちを抑えながら、椅子の背凭れに体重を掛けた。
その直後、保健室の扉がカラカラと音を立てて開いた。
「あら、藍川さん」
振り向くと、そこにはたくさんの資料を抱えた河村先生の姿。
「どうしたの?体調悪い?」
優しく訊いてくれる先生の声は、透き通る綺麗な声で、私のもやもやとしていた不可解な心情が何処かへ消えて行くようだった。
「いえ、何となく」
「あらま、何となくで授業さぼっちゃったのねー」
そう言ってふふっ、と笑みを零す先生は、一応教員なのにも拘らず、私を責めもしないし、突き返そうともしない。
優しさなのか、私の私情を知ってのことか。
そんな贔屓目な感情は、この人に限ってないか。