黄昏の千日紅
卒業式の日でも、放課後になると下級生は部活動を熱心に行っている。
活気に満ちた声、吹奏楽部が奏でる演奏。ごうごうと耳元で唸る風の音。
それらを耳にしながら今日で終わった校舎に心の中で挨拶をし、昇降口から出た階段をゆっくり降りていく。
正門の前にある桜の木下に辿り着き、ふと足を止めてしまう。
見上げれば、脳裏に浮かび上がる初恋の彼の姿。
今、何処に居るのだろう。
どんな風に、成長しているのだろう。
幸せに、暮らしているのだろうか。
” 約束だよ ”
” 必ず ”
” 春になったら ”
「春になったら…」
私の小さく囁いた声が、強く吹いた風にいとも簡単に掻き消され、桜吹雪と共に遠くの方へ消えていく。
その方向を見遣ると、一人の人影があることに気付く。
「迎えに行くよ」