黄昏の千日紅
「え…」
不意に口から漏れる、私の声。
私の金色の髪を強く吹いた風がさらっと揺らし、視界が遮られる。
暫くの間、時間が止まったように感じられた。
桜が散っていくのと同時に、私の髪の毛も、ゆるりと下へと降りていく。
視界が鮮明になり、正門からこちらへとゆっくり向かってくる一人の人物を見た。
黒い正装に身を包み、明るかった髪色は黒く染め上げられている。
両耳にあったピアスは一つもなく、彼は私に向かって微笑んだ。
” 春になったら必ず迎えに行くよ ”
” 約束だよ ”
え、何故今、あの時の言葉が。
そうだ、優くんは、あの日。
私にそう告げて、去って行ったのだ。
「なんで、貴方がその言葉を…」
脈が次第に速度を上げていく。私の声が自身で、微かに震えていることに気付く。
この人が今、「迎えに行くよ」と言った。