黄昏の千日紅
可憐に笑みを零す目の前の青年は、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「………水は無色透明なのに、海が青く見えるのは、太陽光線の散乱説があるんだよ」
「え、それ…」
私の脳裏に、昔の言葉達がフラッシュバックする。
まるで、見当たらなかったパズルのピースを発見し、穴が空いた場所に埋め込んでいくかのよう。
” ねえねえ、優くん。どうして海は青く見えるの? ”
” ああ、それはね、太陽の光が七色で出来ていて ”
「太陽光の中で、最も海の水中を進んで行けるのは、青色」
” 他の色は海の水に吸収されちゃうんだ ”
「青色だけが海の中を散乱できる。それで俺らの目に映るのが青色」
何故。
だって、その言葉は。
私の視界が、段々と水の膜で覆われていく。目の前の彼も、周りの景色も歪んで見える。
嫌だ、泣きたくないのに。
だけど。
「…優、くん」