黄昏の千日紅
その人と子犬の側にゆっくりと近付き、今私が差している花柄の傘を、その人の上に翳すと、雨が落ちてこないことに気が付いたのであろうか、その人物がこちらに顔を上げた。
ミリタリーの、薄いジャケットを羽織ったその人は、フードを深く被っており、表情が見えない。
歳は私とそんなに変わらないか、それとも少し上か。
「…この青い傘、あなたが?」
知らない人と話すことが苦手な私が、恐る恐る声を出した。
何を話したら良いのか分からない、気まずい空気が流れていたからといって、流石に見れば分かるだろう事を口にする馬鹿な私。
つくづく自分に呆れる。
目の前の彼がこくんと頷く。
すると、私の胸の中にある、缶詰とブランケットを指差した。