黄昏の千日紅
「…それ」
「…ああ、はい。えっと、家で飼ってあげたいのは山々なんですけど、うちペット駄目で」
想像よりも高めの声を出した彼に、失礼ながら少し驚いて、しどろもどろになる私の声が上擦る。
明らかに、男性経験少ないですアピールをしているみたいで恥ずかしくなる。
私は、目の前の彼から逃げるように視線を逸らし、子犬にブランケットを掛けてあげた。
私の動作を目で追う彼の視線を、横からひしひしと受けながら、私は子犬に「ご飯食べる?」と訊く。
答える筈がないが、この気まずい空気を掻き消すには十分だと思った。
缶詰を開けて、子犬に差し出す。
すると、喜んだように息を上げ、缶詰に飛びつき食べ始めた。
「かわいい…」