黄昏の千日紅
心の中の声が勝手に漏れる。
すると先程から黙ってこちらを見ていた彼が、突然口を破った。
「この犬さ、俺が貰ってもいい?」
__え?
あれ。
この声、どこかで…
いや。気のせいか。
私は、この子犬のことが心配であった上、飼ってくれるような優しい人間が現れるかも分からなかった為に、何の権限もない私が、何故か大きく頷く。
「ありがとうございます」と言うと、彼が少し口角を上げ微笑み、不覚にも私の胸がときめいたような気がした。
やはり、この口元もどこかで見たような気がする。
勘違いだろうか。
私が彼に差していた花柄の傘を、彼が私に押し返し、いとも簡単に段ボールを片手で持ち上げた。
その際に子犬が嬉しそうな顔で、ワンと声を出す。
うわあ。
可愛い。