黄昏の千日紅
いやはや、こんなもの見慣れているではないか。
何を今更傷ついているんだ。
分かっていたことではないか。
彼は私のような地味で、不細工な女には微塵も興味ない。
誰とでも隔りなく会話する優しい彼なのだから、隣の席の私にも自然と話し掛けてくれるのは、当たり前のこと。
気に掛けてくれることも、当たり前のこと。
__リカか。
私は彼に一度も下の名前を呼んでもらったことはない。
” 彼女 ”のことしか呼ばないのであろうか。
いや、だが毎日彼の周りに群がっている女子達の下の名前を呼んでいたのを、聞いたことがある。
彼は、内心私と同じ名前であることを拒んでいるかもしれない。
寧ろ、私の名前すら知らないかもしれない。
彼の隣を歩く女子達は、学校内でも目立つような派手目のギャルで、髪を綺麗に染め上げ、朝から頑張っているのであろうアレンジをして、化粧を施している綺麗な人達ばかり。
対する私は、化粧っ気のない死人のような顔色。
一度も染めたことのない直毛の黒い髪。
髪の毛くらい巻いた方がいいのか?
いや、そもそも巻き方が分からない。
素朴な私とは大違いだ。
こんな私が彼を好きだなんて、本当に愚かだ。
私は心の中で自分を嘲笑し、立ち尽くしていた体を無理矢理動かして歩き始めた。