黄昏の千日紅





「坂下さんの席にさぁ、俺がいつも座ってるの、何でか分かる?」






そう訊いてきた彼の表情は、いつものような穏やかな雰囲気はどこにもなく、酷く真面目で、私の背中がきゅっと締まるような感覚になった。




「いや…」




瞳をじっと見れば、怖気付いてしまって、分かりやすく私は目を逸らした。




「だーよね」




私が彼の方へちらりと視線だけ戻すと、彼はいつものようなへらへらとした表情に戻っていて、景色を見渡している。




私は何故か、ほっと安堵の息を吐くと、同じように景色を見つめてみた。





やっぱり、この人苦手かもしれない。




横で、手摺に意味もなく体重を掛けたり、引っ張ってみたりしている彼の姿が視界に入る。





「坂下さんはさー、何大に行くの?」



少しの間の沈黙からの唐突な質問に、又もや私はたじろぐ。





「一応、S大志望だけど…」










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