黄昏の千日紅
「どうしてそんなこと訊くの?」とは訊かなかった。
いや、訊けなかったと言った方が正しいのかもしれない。
「すっげー」と、彼が興奮したように私の言葉を遮ってしまったからだ。
「あ、ついでに俺の進路も聞いとく?」
「え、いや…」
私は特別興味のない話には首を突っ込まない質であった為に、断ったつもりでいたが、すぐに沢井くんの声に掻き消された。
訊いてもいないのにぺらぺらと次々に自分の話をし始める彼に、少々呆れも出てきてしまう。
何故か、過去の武勇伝話を持ち出してきた時には、良くそんなに話が浮かんでくるものだ、と少し尊敬してしまった。
私は若干引き気味になりながらも、彼の話に適当に相槌を打ちながら、外の景色を見渡した。