黄昏の千日紅
_____懐かしい。
高校時代の淡い青春の日々を思い返しながら、私は目の前で朝食を食べる二人の少女の姿を見ながら、卓に頬杖を付いていた。
昔のことを思い返すと、私の高校三年生の一年間は全てレオへの切ない恋で埋め尽くされていた。
何か、色々と子供だったのかな。
「ママ?」
双子の一人が私の顔を見て困惑した表情を浮かべている。
「ん、どうしたの?」
双子の姉の玲が首を振って答えた。
「ママが泣きそうだったから」
え?
泣きそうだった?
私が?
「…そんなことないわ。早く食べちゃいなさいね」
いけない、娘に心配させるようでは母親失格だ。
「はぁい」と言って、食べ始める二人を見て私は微笑んだ。
寝室から出てきた夫が視界に入り、私は席を立って歩み寄る。
玄関先まで見送りに行き、私は彼のスーツのネクタイを少し整えた。
「今日はなるべく早く切り上げるから」
「ええ、ありがとう」
彼はそう言ってから、いつものように私の頬に自分の唇を近付け、軽く触れさせた。
そして私に少し微笑むと、「行ってくる」と言って玄関の扉を開けた。
「行ってらっしゃい」
私の声と同時に玄関の扉が閉まって、私はその扉を見ながら振っていた手を下ろした。