黄昏の千日紅





すると沢井くんは驚いたような顔を見せてから、すぐにへらへらとした表情へと戻す。
本当にこの人は、表情がコロコロと良く変わる人だ。




「へぇ。玲央、高校時代の猫被りやめたんだなー!そりゃそっかあー!いずれバレるしなあー!ははっ」




再び声を張り上げながら笑う彼は、玲央の肩をパンパン叩く。




そんな彼を玲央は恐ろしい程の、鋭い目付きで睨んでいた。




「んだよ、そんな目で見んなよ。S大って聞き出してやったのは誰のおかげですかー」



「別に頼んでねえよ」



「へえ?なかなか話しかけられなくて俺にわざと坂下さんの席に座らせるように命じてた、糞腹黒い奴誰だっけー?」



「お前っ…」



「わざと女取っ替え引っ替えして、坂下さんの気を引こうと頑張っちゃってた人、どこのどいつだっけえ?」



「おい、沢井マジで殺すぞ」




「うおー怖い怖い」




言葉とは裏腹に全く怖そうにしていない沢井くんと、猫のような鋭い目付きで睨んでいる玲央を見て、私は一人声を上げて笑ってしまった。





「二人とも」





そこまで私が彼等に言うと、戯れることをぴたりと止め、四つの双眼がこちらを見据える。








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