この夏の贈りもの
「明日には、成仏できるから」


あたしがそう言うと、唯人はあたしへ鋭い視線を向けてきた。


その冷たさに言葉を失ってしまいそうになる。


「でも、裕も悪霊化が進んでるんだろ? 夜になったらその力は強くなるんだろ?」


「そう……なんだけど……」


「なんだよ、裕の悪霊化がどんどん進んでもいいのかよ」


唯人が声を荒げる。


唯人に出会ってからそんな声色を聞いたのは初めてのことだった。


一瞬にして、中学校時代のイジメの日々を思い出していた。


毎日指を指され、からかわれ、時には罵倒された毎日が走馬灯のように蘇って来る。


最初は胸をからかわれるだけだった。


それが徐々に悪化していき、あたしという存在そのものが否定されるようになっていた。


『汚ねぇ顔して笑ってんじゃねぇよ!』


『お前なんで毎日学校来てんだよ! 邪魔なんだよ!』


男子たちはいつもそんな事を大声で言っては、女子たちの笑いを誘っていた。


いやだ。


いやだいやだいやだ。


男子は嫌い。
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