この夏の贈りもの
裕の気持ちが悪霊化を遅らせているのだ。


「幽霊にいい子とかあるのかよ?」


「あるよ。悪霊がいるんだからその逆もいる」


「へぇ?」


唯人はまだ納得していない様子だけれど、確かに裕の言っている通りだった。


特別いい事をするわけではないが、大空たちのように自分の成仏に積極的だったり、幽霊になってからの毎日を楽しんでいたりする。


4人でぞろぞろと開かずの教室の前までやって来ると、ヒヤリとした冷たい空気が肌を撫でた。


「この扉、どうやって開けるんだ?」


南京錠に触れて和がそう言った。


幽霊の裕なら鍵なんて関係ないけれど、さすがにあたしは鍵を開けないと入る事ができない。


「職員室に行ってみようか」


あたしはそう言い、一階の逆側にある職員室を目指した。


昨日和と2人で探検した時に入ったけれど、木製の机が置かれている古臭さのある職員室だった。


学校の雰囲気合っているから違和感はないけれど、いまどき見かけないような重たい机ばかりが並んでいた。
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