この夏の贈りもの
裕に会えたことで安定していたのが、自分がこの場から動けないと知った事でまた不安定になっているのだ。


「ホナミさん、きっと大丈夫だから」


裕がなだめてくれているが、いつまでもつかわからなかった。


「チホ、やるしかないだろ」


和が急かす。


「わかってるよ!」


あたしは乱暴にそう返事をした。


わかってる。


ここにはあたししかいないんだから、あたしがやるしかないってことくらい。


だけど、自分の手を見下ろすと小刻みに震えていることがわかった。


怖いんだ。


ここまで来てあと2人を成仏させたら終わりなのに、その前に悪霊の存在がいるなんて思ってもいなかった。


やるべきことを理解していても、体が動かない。


数珠をジッと見つめて固まっていると、途端に肌に冷気が絡み付いて来た。


ハッとしてホナミさんを見る。


ホナミさんの体から大量のモヤが放出され、裕を包み込んで行っている。


「だめ! やめて!」
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