恋のルール教えて下さい ~憧れの課長と大人の恋~
「初めてのデートとしては、もっと気を使いたかったけど。ここでいいかな?」
葛城さんが立ち止まった。
彼が私の顔を覗き込んで、現実に意識が戻った。
遅い時間だから贅沢は言えなくて、ファミレスで食事になった。
「話が出来ればいいから、十分です」と答えた。
ファミレス全然、歓迎。
というか、緊張するから、そういうところから始めて欲しいくらい。
「そういってもらえると助かるよ」
さすが、上級者。細かい所まで気を使ってくれる。
ウェイトレスさんが水を持ってきてくれたタイミングで、私は話を切り出した。
「あの……」正直に言おうと思った。
「私、恋愛初心者なので、何から始めたらいいのか分かりません」
「そうだな」と穏やかに考える彼。
「わからないことや、困ったことがあったら、その時、直接聞いてくれればいいんじゃないか?恋愛に、初心者も上級者もないよ。
一人で悩んでるより、遠慮なく俺に言ってほしい」
「はい。そうさせていただきます」
軽く頭を下げた。これだけでもありがたい。
私は、バッグの中から手帳を取り出した。
忘れないうちに、メモしておかなければ。
「何してるの?」と葛城さん。
「何って、メモです。あなたがおっしゃったことは、すべて書き留めて、自宅で復習します」
長年してきた習慣は、容易に変えられない。
くすくすと笑い声が漏れてきた。私の目の前で葛城さんが笑ってる。
「君って本当に面白いよね。でも、そんなことしても無駄だと思うな」
「どうしてですか?」
「同じシチュエーションになるって、滅多にないだろう?
それに、メモ取ってるの知っちゃったら、嫌でも同じ状況にはもっていかないよ」
「えっと……」
「いつも、君を戸惑わせるようにするってこと。ドキドキしなきゃ恋愛じゃない」
「なるほど」
「こら、言った先からメモるな。
それに、させていただくは、なしにしてくれ。
会社を離れたら俺は君の会社の課長じゃない。敬語じゃなくて普通に話そう」
「はい」