雨を待ちわびて
話を聞いて貰う為に病院に通う事は必然的に無くなった。
家では先生では無いけれど、今日あった事、何でも話してくださいと言ってくれ、楽しく聞いてくれる。
だから、カウンセリングは必要無い。
料金は発生しないのですか?と聞くと、そうなると、俺が先生で居なくてはいけなくなりますからと言う。
…なるほど、先生と患者では無いって事。
私生活との線引きはきっちりしておかないとって言っていたし。
個人で開業している訳ではありませんから、俺と話す度、料金が発生するのも可笑しいでしょって。
話をする場所と時間帯が変わった。
話す内容は変わらなくても、プライベートだ。
カレンダーに簡単に印を付けてくれている。
通常〇、夜勤⚫、休み☆。予定が変わる事はまず無い。
今更感からなのか、当たり前のように意識が無いのか、布団は買い足さない。
ずっと中二階で一緒に寝ている。
…いい大人の男と女なのに。
寝る時には、私が夢を見るという事も含め、自然と中身は先生と患者の関係性になっているんだ。
…私は、悪夢を封じ込める事が出来なければ、こうして、誰かを必要とする事を続けて行くつもりなのだろうか。
そんな事を考えているといつも、余計な事は考えなくていいですから、と言われてしまう。
動悸だとか、脈だとか、色んなモノが混ざり合って、考えている事が解る事ってあるのかな…。
溜め息をついてしまうと、寝てください、と言って抱き込まれてしまう。溜め息で解ったのだろうか。そうかな…。
「…何も考え無くていいように、…疲れて眠らざるを得ない状態にしてあげられるといいのでしょうが…」
「…え?」
「俺は久遠亨で、片霧亘では無いから…」
「え?」
「何でもありませんよ。眠りに入り辛いなら、睡眠導入剤を処方しましょうか?明日、保険証を預けて貰えますか?」
「いいえ、…大丈夫です。悪い夢は見て無いですから」
「…そうですか。では、…様子を見る感じでいいですか?」
「は、い」
いつまでもって、訳にはいきませんよ。
今こうしている時は先生でも、俺とずっと一緒に居る訳では無いのですから。