雨を待ちわびて

「直さん?今日は通常勤務です。真っ直ぐ帰って来ますから、ご飯お願いします」

「はい、行ってらっしゃい」

「…行ってきます」


私は今、ここで家政婦擬きなる事をしている。
三食付きの、住み込みで、炊事、掃除、洗濯等、家事全般が私の仕事。
給料は気持ち程度だけど、食費も宿泊費もかからない。
それで良いならと契約した。
1DKだから決して広くはない。
物も少ないし、散らかさないから、掃除も楽だし、食材などの買い物は都合をつけて一緒に行ってくれる。
物凄く楽にさせて貰っている。

ここは久遠亨さんの部屋。
私は、あのまま、ここで暮らしている。
高収入目的で仕事がしたかった訳でも無いから、こうしてめり張りのある規則正しい生活が出来ている事で充分、充実している。
必要最小限の身の回り品を買い揃え、中二階の部屋の一角に置かせて貰っている。
男女が生活するには不自由かも知れないが、その不自由さこそ、気を遣いながら居られる、居易さの元だと思う。

帰らないと決めて、一人で生活しようとした私を、結局、引き止めたのは、久遠さんの言葉だった。
大丈夫だと思って、虚勢を張っているだけだと。
大丈夫だと思わせてくれている人間が居たからだと。
素直に片霧さんに連絡をしないのは、やはり私の要望は聞いてくれないだろうと思っているから。
私は片霧さんに囲われているのではない…。そんな関係では決して無いと思っている。
気持ちは解らなくても、自分の方に気持ちがあるんだ。
夫婦でも無いなら、自分が居させてもらう為に、家賃は半分払わせて欲しいのだ。そうじゃないなら…、居られない。
…女として、そんなところが可愛く無いのかも知れないけど。
片霧さんは、居ればいいんだと、そういう風に言った…。
私にしても、片霧さんの事は何も知らない。
…よく解らない。
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