雨を待ちわびて
ここ、二、三日の事なのに、誕生日をきっかけに、急に密な日を過ごしている。
何も変わってはいない。
直さんには、家事をお願いしているし、それに対して賃金は発生している。
つまり、好きだと言って身体の関係を持ってしまったのに家政婦のままだという事。…これは可笑しい。
妙な事になる。そう思っていた。
「亨さん、私、もう…家政婦さんは辞めます」
「はい」
「家事は、変わらずします。でも賃金は貰いません…このまま、変わらず居てもいいですか?」
「はい」
「その変わり…」
「家賃を払いたいのですね?」
「はい。半分、払わせてください」
「解りました。そのお金は、…この口座に入れましょう。カードは…これ。渡しておきます」
引き出しから通帳を取り出しカードと一緒に渡す。
「はい」
「管理は直さんがしてください。暗証番号は誕生日を逆からです。これは直さんが自由に使ってください。
ここだと…、部屋は狭いままですが、構いませんか?」
「はい、この部屋、好きです。それから…」
「仕事をしたいのですね」
「はい」
「どうぞ。無理する事なく、自分のペースで出来る事、ゆっくり探して始めてください」
「はい、有難うございます。あの…」
「ん?どうしました?」
「あの、私、…まともな生活をするようになってから、ずっと気になっていて。
私は、依存症ではないですか?…その…セックス…依存症のような…」
だって、私の身体はずっと意思に関係なく柳にされ続けていた。自分が快楽を求めてでは無くても、執拗に弄られ、繰り返され、身体は…イかされてしまっていた。だから、嫌でも身体がそれを求めてしまうんじゃないかって…。
「何か…、読みましたか?読みましたね?」
置いてある関連した本を読んでしまったんだな。
「はい。私、ずっと…強要されてシていました。嫌でも身体はイかされました。…それがずっと、長く続いていたから…。そうしないといられない身体になっているのではないかと思ったら…私は…」
「いいえ。心配無いですよ。誰でもいいから、シないといられないという事では無いでしょ?」
「はい、…それは無いです」
「大丈夫、心配無いですよ。今も…俺をそんな対象の相手かも知れないと思ってしまったのですか?」
俯いてしまった。
「…私…色んな思いもあるけど、…する事に…節操が無くなっているのではないかと気になって、だって…ずっとされてた私は…」
「言いたい事は解ります。…過ぎったモノも解ります…。
…違いますよ。直さんは、節操はあります。大丈夫です、本当に大丈夫です」
「…本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です。…どちらかと言えば、節操が無いのは、男、…俺の方かな?」
「…え、久遠さんがですか?」
「はい。…狭い部屋ですから。直さんが見えていると、ご飯を作っていても後ろから抱きしめたくなります。…居なくて、お風呂に入っていると思うと、…入って行きたくなります。洗濯物を干していても、取り込んでいても、やはり抱きしめたくなります。
俺の方が可笑しいくらいでしょ?
…好きなんです、凄く。いつも抱きしめたいと思ってしまうんです」
「…ストーカーですか?」
クリクリとした目で見上げて来る。
「ん?ハハハ。…はい。どこにでもついて回りたくなる、直さんのストーカーですね」
「…フフ。適法のストーカーさんですね。…私…」
「無理無く、好きになってくれたらいいです」
「凄く、惹かれているんです…」
まあ、二人だけで一緒に居ますからね。状況がさせる部分ではあります。まだ解りませんよ。
「はい。でも、…ですよね?」
刑事さんに対する気持ちは…ある。
「…はい」
「こういう事は無理はしなくていいのです。自然に…心の向くままで、それでいいんです」
「…はい」