雨を待ちわびて
…白いバラ。何気なく聞かれて答えた事を、記憶してくれていたんだ。そういう事って、出来るようで出来ない…、何だか凄く嬉しい事…。
ん…寝返りを打つ。
中二階から見下ろすと、テーブルのバラが見える。
毎日水を換えているお陰か、元々開き切っていなかったからか、よく持っている。
常夜灯の仄明かりの中、今夜も白く浮かび上がっている。
今夜、亨さんは居ない。布団の中には私一人。
…家賃の事も、仕事の事も、言おうする事、解っていた。すんなり受け入れてくれたな…。家賃、要らないって断るのでは無く、受け取って、結局は私に返って来るような配慮をしてくれた…。
亨さん…夜勤だ。当たり前だけど、夜が明けないと仕事は終わらない。
帰って来てからが睡眠だ。
はぁ…眠れない…。
無理に寝ようとも思わないから、瞼を閉じる事もしない。
うつらうつら…、浅い眠りの状態になるのが怖いのだ。夢なのか現実なのか、解らなくなるから。
現れるモノは…夢に間違いは無いのだけれど。
…ん、ん、…ん。…嫌、…い、や。
黒い塊…、重い。手が…腰を掴む…。身体が…揺れる。激しく揺さ振られる。…嫌。…止めて。白く浮かび上がる。…顔………柳。っ!!……。
はぁっ、はぁ……はぁ…。
あ、ぁ…はぁ、眠ってしまったんだ。……はぁ。
「ただいま…」
…。
「直さ〜ん。あれ、こっちかな。直、さ、ん?…居ないな」
「…お帰りなさい」
「あ、そこでしたか」
階段を登る。
「ただい、ま…。どうしました?どこか具合でも?
…汗、…凄い汗だ」
「ごめんなさい、何でも無くて。眠れなくて起きていたら、朝方になって眠ってしまって。夢を見ただけです」
「直さん…」
「あ、駄目です、汗が付いてしまいます」
亨さんは膝立ちで私を抱きしめた。
「…こんなに悩まされて…、苦しかったですね、怖かったですね…」
シた事で刺激してしまったかも知れない。
「亨さん…」
「最近いつもですか?いつも一人の時はずっと夢を?」
「…はい」
怖いと言っても仕方ない。一人の時はあるんだから。どうしようもない。
ギュッと抱きしめられた。亨さんも、解っている。
「こんなに汗びっしょりで…このままでは風邪をひきます。お風呂に入りましょう」
「…はい」
「俺もまだなんで、一緒に入りましょう」
「…ぇえっ?!」