雨を待ちわびて

キャップを開け、ゴクンと一口水を飲んだ。
美味しい…気持ちいい。

ペットボトルを亨さんに渡すと同じように一口飲んだ。
二口目を口に含むと私をゆっくり寝かせながら唇を重ねた。
薄く開いた唇を開けるように顎を掴まれた。水が注ぎ込まれ…飲み切れなかった水が口の端から首を伝った。
ん、…ふ。ぁ、亨さんの唇がそれを拭った。

「亨さん…」

「…このバラを見ていてください、ずっと。いいですね?見たくない映像が浮かぶかも知れません。
辛くなったら…、いや、多分辛くなると思います。途中で止めませんから、辛くなったら、思い切りしがみついてください。いいですか?」

「はい…」

…怖い。悲鳴を上げてしまったらどうしよう…。

「…怖くない、俺です。貴女を抱くのは俺なんです。声をあげても構わない…、悲鳴だってあげて大丈夫、大丈夫です。俺が何もかも受け止めますから。嫌なら嫌…感情を隠し込まないで、そのままに。嫌だと叫んでください。いいですね?」

「…はい」


「では、いいですか?」

「はい」

…亨さん。…ん、…ん。

柳という男。決して乱暴に扱って抱いたりしていなかったと聞いている。
むしろ、…逆だ。守田直の事を身体のみならず、…愛していた。
初めは好みの女を思い通りに出来るよう、脅して契約で縛り付けた。身体の関係を持つだけで満足だったはずが、本気で可愛くなった。
だから…頻繁に抱いた…。何度も…嫌がろうと……抱き続けた。
最初が間違っていたんだ。…報われない愛だ。…歪んでしまった。

「…ぁ……亨さん。…嫌、嫌、柳が…」

やはりバラを見てしまうと柳はどうしても甦るんだな。

「大丈夫…、バラはもう見ないで俺を見て。…俺だけを見て、柳を消すんです。直さんを抱いているのは俺です」

あ…亨さんに柳が重なる。

「怖い……亨さん、い、や、柳が…居る、重なる、い…」

んん、…ん、…ん、ん、ぁ。
悲鳴を上げそうになった唇を塞がれた。

「ん…、直さん…ゆっくり息をして…。俺を見て…、そう、ずっと俺を見て」

ぁぁ…ぁ、亨さ、ん。
…亨、さん、ぁ…亨さん…。

「…抱きしめて…。もっと、強く抱きしめて…お願い」

しがみつくように抱き着いて来る直をギューッと力を込め、抱きしめた。

「…痛い、…大丈夫、…このまま抱きしめていて…」

普通に聞いたら可笑しい言葉だ。

「ん…。大丈夫?」

「はぁ…はぁ、…大丈夫…」

力の抜けた直が荒い息で安堵したように抱き着いてくる。俺も抱き込む。…はぁ、…直。大丈夫だ。
本当に荒療治だ。結果次第では、更に傷を深めてしまう可能性もあるんだ。…俺も拒絶される。
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