雨を待ちわびて
オムライスでも作っておくかな。
俺は料理が出来ない訳じゃない。していなかっただけだ。昔は、していたんだ。
珈琲を飲んでいた。
「亨さん?」
今度ははっきり呼ぶ声がした。
階段を駆け上がった。
「おっと〜」
「亨さん?大丈夫?」
「大丈夫」
勢い余って布団にダイブした。わざとだ。
「起きたんだ、大丈夫?」
「あ…、亨さん…」
起き上がって、慌てて布団で隠すようにして座っていた直に、口づけた。
「ん…珈琲の香りがします…」
「起きたら一緒に食べようと思って、オムライス作ってあるんだ。直が起きる迄、珈琲を飲んで我慢していた」
「わっ。先に食べて貰って良かったのに」
「俺は嫌だね。一緒に居たら一緒に食べたい。一人で先に食べるなんて考えられない。
直…起きられるか?」
「はい。…でも、何も着ていないから無理です」
「先に下りて温めとくよ」
服を着て下りて来なさいって事ですよね。
ゴソゴソと下着を着け、服を着た。
一本挿してあったバラが無くなっている。また元に戻してくれたんだ。良かった、捨てて無い。
レンジの前で温まるオムライスを見ている亨さんに近付いた。後ろから身体をくっつけ、抱き着いた。
あ、私、こんな可愛らしい事したこと無かったのに。
抱き着いてから戸惑った。
腕を外そうとしたら、掴まれた。
「抱き着いたら、責任持ってずっと抱き着いていなさい」
「…フフ、…はい」
腕を戻されて腰の周りに巻き付けられた。
背中に身体を押し当てた。手を重ねられて、握られた。
チン。
「…レンジも空気を読めばいいものを。…もう一回、温め直したら、やり過ぎでヤバい事になってしまいますかね…。もう少しこのままで居たいのですが」
…一緒に居る事。何気なく過ごす事がこんなに幸せだなんて…。
「フフフ。私、猫舌なので、少し冷めたくらいで大丈夫です」
「…そうですか。ではこのまま、では無く…」
亨さんが振り返って、正面から抱きしめた。
「はぁ、少しでも触れてしまうと駄目ですね。さっきの唇が、…もう恋しい…」
抱きしめた私の腕はそのままに、亨さんの手は私の顔を包んだ。
唇が触れたと思ったらゆっくりと食まれていた。
「…俺、もの凄く眠い。だけど…このままだとまたシたくなりそうだ…。身体が疼く…」
また、食む。珈琲味の唇は…凄く甘い…。