雨を待ちわびて

俺達は、容疑者としてある人物を特定していた。
他には居ない。
人の心を失って、こんな事が出来るのは、ただ一人。
柳の母親に他ならない。

元々人生の全ては息子だというような生き方をして来たタイプだ。殺人をしているなんて意識は無いだろう。
今は、ただそれを実行する為だけに、生きる使命を感じている事だろう。
きっと柳の名前を呟きながら、お母さんが貴方の変わりにみんな居なくさせたからねって。
母親というよりも、自分が柳の特別な恋人とでも思っているのかも知れない。…違いないと思う。
柳が女とつき合うなんて許せなかったのかも知れない。

直には部屋から出ないように言ってある。
あの、人の良さそうな顔で近付いて来られたら、直はドアさえ開けてしまうかも知れない。


柳の母親が家を出たと連絡が入った。
いよいよ、行き先は俺の部屋か?
直に連絡を入れた。
コールはしているが留守電になる。
…おい、何している。出掛けているのか。

柳の母親は俺の部屋には行かなかった。
向かったのは、俺の部屋から近い公園。
…公園?

「片霧さん、守田直が公園に居ます」

何?
流石に人の目のある公園では何も出来まい。

「動向を見ていてくれ」

「了解」

…直、気分転換にでも出掛けたのか。
はぁ、携帯は持って出てないのか。…呑気にもほどがある。


「ベンチに腰掛ける守田直の隣に座りました」

話でもするつもりか。

「何やら話して、笑っています。手土産のような菓子を勧めています。どうします?行きますか?」

「いや、いい。口に入れてからでいい」

「え?でも、それでは間に合いませんよ?」

「大丈夫だ。解毒剤は渡してある。効き始める前に飲めば間に合う」

別の毒を使われたら、…アウトだがな。
連続性のある殺しでは、共通するモノを使う。それが決まりだ。だから、別は無い。

「守田直が立ち上がりました。自販機に行っているようです」

その隙に毒を入れるか?

「柳亜耶が菓子の裏に何かしています」
< 30 / 145 >

この作品をシェア

pagetop