雨を待ちわびて
「どうします?本当にこのままで大丈夫でしょうか、あ、守田直がお茶を二つ買って帰って来てます」
直、念の為、菓子は口に含むだけにしてくれ。大丈夫だとは思うが、間違ってもうっかりお茶で流し込むんじゃないぞ。
「お茶を先に飲むようです。中々開けられないのか、柳亜耶が代わり開けています。
か、片霧さん…、守田直が倒れました」
馬鹿な…。そんなはずは…。どうやったんだ。
「柳亜耶、確保してくれ!急げ」
「はい!」
「守田直が解毒剤を持ってるはずだ、探してくれ」
救急車…。
「ありました。あ、でも、…」
「なんだ!」
「あの、起き上がりました、よ?」
「どういう事だ!」
「どういう事です?」
「貧血よ、きっと」
「今のは柳亜耶か?」
「あ、はい」
「私、この方には何もしていないわ。あのお二人には、ジュースを飲んで貰ったけれど」
「じゃあ、菓子の裏に何かしてただろ?あれは何だ」
「これは、こうしてめくって…、きな粉を振ると美味しいのよ」
「だ、そうです」
はぁぁ、…なんなんだ。はぁ。
「私、この方、好きなのよ?だって、あの子がとっても可愛がってる人でしょ?」
……嫌。もう…、嫌。…可愛がられてなんか…私は違う。
もう…笑顔で、演技なんかしなくても…いいですよね。
「何故、あの二人を…」
「だって、いつか邪魔されたら嫌じゃない?あの子とこの人はとっても仲良しなんだから。私、知ってるのよ?あの子はね、もの凄くこの人に夢中なのよ。この人と居たくて、家に帰らないって、連絡して来る日もあるんだから。はぁ、だから、仕方ないじゃない?許さなきゃ、ね?」
…。
柳が死んだ事、ずっと認められないんで居るんだな。
母親の心…。
これはもう理解できる域を越えてしまっている。
もう、直に関わる事を喋らさないでくれ。
「もういい…話しても通じないはずだ。そのまま来て貰え、署で聞く。まだ任意同行だからな」
「解りました。守田直はどうしましょう?」
「明日、話を聞く。そのまま帰してくれて大丈夫だ」
「解りました」
…はぁ。直に、また、嫌な記憶を植え付けてしまったな。