雨を待ちわびて
直が生活する部屋は、眩しいくらい全面が白一色だった。あるのはベッド、ほぼ物が無かった。
特に問題行動を起こすといったモノは無いので、極普通に生活を送っている様子だ。
自分の中で話そうとする伝達意識はあるのに、口が開こうとしない。心の中の影の部分が影響して、そうさせているのだと言う。
かと言って、全く会話をしない訳では無い。
問い掛けに応えたりは出来ているらしい。
心が病んでいる場合は、何かがきっかけとなり、頭の中の霧が晴れるように、一気に回復する事もあると言う。そうなると塞いでいた様子が嘘のように明るくなると。
心を閉ざさせているモノ、頭を悩ませ続けさせるモノ、根本が無くならなければ、晴れる事は中々難しいだろう。だけど経験してしまった事実は無くならない。
そうすると、俺はどうなんだ?…。
直の目に触れない方がいいんじゃないのか。俺は事件に関わりがある人間だ。
それはずっと変えようが無い。
俺を見て、事件の事を繋げて考えたら、また昔された事を思い出す。
悪循環じゃないのか…。
この先、生きていく為にというか、立ち直る為に、必要だと思っているのなら、俺は直を守り続けようと思うが。
そこのところはどうなんだろうか。
会ってはいけないとは言われていないし、直も俺の事を拒絶しようとはしないらしい。
ただ、少しでも前進していたモノが、会ってしまった事で逆戻りさせてしまうのであれば、会うのはよそうと思う。
不規則な時間、来ることも告げず、遠目に見ていると、直は至って普通だ。
穏やかな表情をしているし、無表情とは違う。顔の筋肉はちゃんと動いている。
だが、これが心底からのモノなのかどうかは解らない。それ程、上手く作っているのかも知れない。俺は直を知らない。
今まで人というモノは、笑っているなら、笑っている、泣いているなら、泣いている、それは心がそうさせていると思っていた。そうじゃない場合もあるんだな。
少しでも話したいと思って、言葉を発せられるといいのだが…。