雨を待ちわびて

「守田君」

「はい」

「ちょっと」

「はい」

手招きされた。

「……守田君、社長がお呼びだ。…君、何かしたのかい直々に呼ばれるなんて…。“余程”の事だと思うよ。すぐ行くように…」

「あ、はい」

そんな言われ方をされても…。思い当たる事なんて無い。
自分では気が付かない間に、何か失礼な事でもしたのだろうか…。直接の関わりなんて無いし…。何だろう。


上階にある社長室に向かおうと、降りて来るエレベーターを待っていた。
チン…。
ドアが開くと受付で見掛ける、確か…川喜多さん、そう、川喜多さんが飛び出して来た。

「あ、ごめんなさい」

「いえ、…大丈夫です」

「貴女…守田、さ、ん?」

「は、い?」

美人で有名な川喜多さんを私が知っている事はあっても、川喜多さんが一般事務員である私を知っているの?
あー、瞬時に社員証を見たのかな。

「…そう。可哀相に…」

「え?」

川喜多さんは足早に去って行った。……今の、何…?
もしかして、川喜多さんも、社長に呼ばれていたのだろうか。そして叱られた…。だから、私に可哀相にって…。
どうしよう…。私も今から叱られるんだ。社長と一対一だろうから。恐〜。…泣かずに耐えられるかな。

チン。
あ、着いてしまった。

ふぅ。…。
コンコンコン。

「はい」

…うわ。社長、居た。

「え、営業課の守田です」

「入りたまえ」

「はい。失礼します」

カチャ…。
カ、チャリ。………え?今の…鍵が、勝手に掛かった?え?用心のため?初めて来たから解らない、そういうモノなんだろうか。

「こちらに、来たまえ」

「あ、はい」

社長…だ。
< 35 / 145 >

この作品をシェア

pagetop