雨を待ちわびて
失声症。
いつも喋れない訳でも無い。…気持ちが塞いでしまうと、直の口は閉じてしまう。
原因となった人間はもうこの世にはいない。
だけど、またその事も更に影を落とす。
殺したのは不知火だったから。
自分達の事を知ってくれていた人。
「先生、私、夢を見て思い出した事があります。片霧さんに言わなくちゃ…」
「では、連絡してみましょう」
「はい、お願いします」
「来られるかどうかは未だ解りませんが、大丈夫ですか?話せますか?当然、事件に関する事ですよね?」
「はい。大事な事、思い出したんです」
ゆっくり頷かれた。
「とにかく、来て頂く事を強く望んでいると伝えましょう。どうしても話せなくなっても大丈夫。片霧さんには会えますよ?」
「先生…」
「会いたいと思ったんですね?片霧さんに」
「はい、…とても…」
会いたい。
「ここは僕が何とかします。忙しくても来てもらえるようにしますから。…時間外とかにね」
え?
「あの…」
「当たり前の面会時間に刑事さんが来るのは無理というものです。時間を決めていてもその通りに中々出来ない職業です。融通はこちらが利かさないとね。
では早速、連絡してみましょう」
はぁ……、話すのは辛い事だけど、片霧さんに会える…かも。
片霧さん、…会いたい。