雨を待ちわびて
「…座れ」
「はい。あ、お水…、先にお水、いいですか?」
「あ?…ああ」
…。
大人しくお水を手に戻った。
腰掛けたソファーの横をトントンしてる。
早く横に座れって事ね。
今までには無い緊張感が走った。
「あ、の…」
「直…」
ひっ。
「は、はい」
低い声…。
「…何ビビってんだ。これなんだけど」
スーツの上着の内ポケットに手を入れた。何やら取り出そうとしている。
ピ、ピ、ピストル?!まさか、撃たれる?
先生〜、どうやら私が撃たれるようです。
「…何、青くなってんだ…。どっちがいいか、決めろ」
ガサガサと言う音と共に広げられた物は、マンションの見取り図、…だった。
…はぁぁ。なんだ…見取り図か…。脅かさないでよ〜。
…マンション?見取り図?
「片霧さん、これ…」
勝手に決めるって言ってなかったっけ?別の話?
「…石井がな、家に居る時間が長い人が、居て快適な方がいいに決まってるとか、…とにかくゴチャゴチャ言うから。…どっちがいい?
ああ、見方、解るか?俺はこだわらないから、好きにしろ」
あ、…。嬉しい。嬉しいけど、それを言うと、また、M気質だと言われてしまうのかな。
もっと欲を言えば、ここはこっちがいいんじゃない?とか、片霧さんと沢山話して決めたい。それは…贅沢と言うモノなのかな。…好きにしろって言ったし。
「どっちがいい」
「あ、そんな、…直ぐには無理です。見せられたのは今の今じゃないですか。未だ、全然…見てません。考える間も無いのに」
「そうか。別に…急かしたつもりじゃない。…好きに考えろ」
「いつまでにとか、ありますか?」
「早い方がいいだろ。直の為にも」
「解りました。なるべく早く決めます」
「ん。じゃあ、戻る」
立ち上がって玄関に向かう。
「え?」
慌てて後を追い掛ける。
「今日はもう終わりじゃなかったのですか?帰って来てたんじゃないのですか?また出掛けるのですか?」
縋るように話し掛けてしまった。だって、もう居るものだと期待してしまった。早く決めるって言っても…少しの話も出来ないなんて…。
「詳しくは言えない。まあ、先に居る人間と交替だな」
「もう、戻るって…仕事中だったのですか?」
「丁度、晩飯に出たところだ」
…。
…直、そんな顔をするな…。
「…気をつけてくださいね」
「ん。………直」
ぇ、ぁ、…ん゙。
「…行って来る」
「はぁ。…は、い」
おそらく、高揚して顔が赤くなっていると思う。はぁ…熱い。
頬に手を当てられた。
「フッ。鍵、直ぐしろよ?」
…可愛いやつだ。
「…はい。あの…、行ってらっしゃいませ」
「…ああ。行ってくる」
はぁぁ……。腰が抜けるかと思った…。
急に片手で抱き寄せられて、頭を押さえられて…、のけ反る程覆いかぶさられ長く唇を貪られた。
直って…、低い声で呼ばれただけで、私ったら…身体が反応してしまった…。
片霧さん…、今夜は居ないのに。
…どうしてこんなに…はぁ。