雨を待ちわびて
「少し後ろにもたれるようにしましょうか」
壁まで俺がズリズリと下がり、守田さんを引き寄せるようにして、もたれさせた。
「腰に枕を当てますよ。しばらく、このままで居ましょう」
「はい」
身体の半分は俺にもたれるように身を預けて来た。
…俺は…刑事さんじゃないんだけど。
「久遠さん」
「は、はい…」
「身体に、久遠さんの身体に腕を回してもいいですか?」
それって、言い方は違っても、抱きしめるって事だろ?
「安心するんです」
…。安心すると言われたら、そうした方がいいのは解るけど…。
俺は…先生だけど、今は完全な先生じゃないし。
全くのプライベートな時間に、プライベートな場所に居る訳で…。
「この身体、好きなんです」
は?!
どういう意味なんだ。
「引き締まっている身体、安心するんです」
なるほど……代用という事だな。
さぞかし刑事さんの身体は、鍛えられて引き締まっているだろうから。
安心する身体、そういう事だ。
「俺ので良ければ、そうしますか?」
「…有難うございます」
もたれた身体を更に寄せて来て、ギュッと抱きしめられた。
…おぉ。
背中に腕を回していいものかどうか…。普段は何も…普通に出来てるのに。
上げたり下げたりしていた。
「構わなければ、抱きしめて貰えますか?」
「はい…」
弱っているのは守田さんの筈なのに、俺の方が、もの凄く弱い立場に居るような不思議な感覚がした。
意を決して抱きしめた。俺は明らかに動揺している。病院で白衣を着ているならこうはならない。むしろ、即、抱きしめていただろう。
それだけ、素になってしまっているという事だ。
「こうするなら、横になって抱きしめた方が良くないですか?安心するなら、その方が眠れるでしょう」
「…はい、そうします」
…抵抗は無いんだな。言ったように横になり抱きしめた。
要は、俺は抱き枕という事だ。
一人で寝る人間は横向きで枕を抱いて寝るとよく眠れる。そういう事と同じだ。
守田さんは、硬いしっかりした抱き枕が好みだという事だ。
…悪い夢を見ずにいられるなら…一晩の事だ。
いいか。