ロストマーブルズ

「コンビニで起こったことはあなたが見た通りよ。あれは確かに私が起こしたこと。あの騒ぎは私の犬がやってしまった。でもそれは隠さなければならなかったの。ツクモは……」
「ツクモ?」

「あっ、犬の名前なの。ツクモは過去に人を噛んで怪我をさせたことがあって、それで危険だからって処分されそうになったの。それを私が預かって絶対人に役立つような犬にするからって約束したわけ。これがさっきも話したプライベートな理由。もし今回のことがばれちゃうとツクモを庇いきれないの。でもあの時、事件を無視できなくてついあんなことをしてしまった。私のせいでツクモがまた凶暴な犬だなんて思われたら困るからつい嘘をついてるってことなの。私だって嘘をつくのは悪い事だと思ってるけど、守るためには仕方がないこともあるの。だからごめんなさい」

 最後はぐっと歯を噛み締めた絞った声となり、咄嗟に頭を下げたキノの態度は本当に悪いことをしていると分かっている様子だった。

 ジョーイは不意打ちをくらって当惑してしまう。

 ──守るためには仕方がない嘘

 ジョーイの頭にはその言葉がぐるぐるしていた。
 そこにキノの殊勝な態度を見せ付けられると、さっきまで強気でいたジョーイは萎えてしまった。

「そ、そうだったのか。ごめん。俺の方こそなんか好き勝手に話してしまって」

 どうして良いのかわからないくらいばつが悪かった。

「でもこの事は誰にも言わないで欲しい」
「ああ、わかった」

 キノは安心したかのようにほっと息をつき、ニコッと微笑んだ。
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