ロストマーブルズ
 キノは全てが終わったように、すっきりした表情でジョーイと並んで歩いている。

 ジョーイもその雰囲気を壊したくない思いで、遠慮がちになってしまった。

 おどおどとキノを見つめると、そこには少しの間、キノをアスカに例えて勝手に想像してしまっている自分がいた。

 まだキノからアスカのイメージが拭えない。

「あっ、そうだ」

 ちょうど駅の前に着いた時、ジョーイは突然思い出し、ポケットに手を突っ込んだ。

 中からビー玉を取り出して、それをキノに差し出した。

「これは」

「これもホームに落ちてたんだ。あの時落としたビー玉だと思って持ってたんだ」
 キノは恐る恐るそれを受け取った。

「ありがとう。覚えていてくれてたんだ」

「覚えているも何も、あんな派手なこと目の前でされたら、忘れられないよ。俺も子供の頃ビー玉で遊んだことあったからなんか色々思い出したよ。昔の友達のこととか」

 ジョーイの瞳はキノを捉えているのに、その瞳に映し出された姿はキノの存在ではなかった。アスカを思い浮かべて瞳の焦点が合っていない。

 キノはジョーイのそんな瞳をつい見つめてしまった。

 ──キノがアスカなら俺は……

 ジョーイの心も完全に飛んでしまっていた。
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