ロストマーブルズ

 試合終了後、聡が得意げな笑みを向けてキノの側にやってきた。

 キノは遠慮なく聡を抱きしめ「おめでとう」と祝福する。

 聡は少し頬を赤くして照れくさそうにしていたが、素直に受け入れてるところを見ると内心は嬉しくてたまらない様子だった。

「お前、すごいな。見直したぜ」

 ジョーイもつい声を掛けたが、ジョーイに対しては手厳しかった。

「ふん、こんなの当たり前さ」

 やっぱり生意気なガキと心で思いながら、これってシアーズに見せる自分の態度そのものだと思うと、人のこと言えなかった。

 ジョーイは改めて自分のやっていることの酷さを知った。

 かといってすぐさま心を入れ替えて直せるわけでもなく、そんなことを考えていると聡がどんな悪態をついても憎めなかった。

 ツクモが聡にじゃれ付きだした。

「そっか、ツクモも一緒に喜んでくれてるんだね」

 聡はツクモの頭をぐしゃっと撫ぜていた。

 その時喜んでいたはずのツクモの動きがピタッと止まり、そしてじっとすると今度はキノが何かに気がついたように辺りを見回した。

「ちょっとトイレに行って来る」

 キノは校舎側に走って行ったが、ジョーイはこのとき気にも留めなかった。
 キノが居なくなると、改めて聡はジョーイを頭の先からつま先までじろりと見渡す。

「あんた、ハーフ?」

「俺はジョーイだ」

 やっぱりそう来たかと、子供だけに容姿を持ち出すことは予め分かっていた。
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